眩しくて目をすがめる。外はすっかり青空で、窓を開ければ清しい空気で部屋 は満たされた。まるでなんにもなかったみたいだな、真実はそんなことはなく て、昨夜見た新八の顔も俺が泣かせたこともちゃんと覚えてる。あっなんかや ばい。今のなしで。
たばこに火を付けながら部屋の中を見渡す。シーツからはまだ眠る黒髪がはみ 出していた。白い如何にも清潔そうなそれにくるまって、しかし残る跡は生生 しくて苦笑する。こんな子どもにかまけているから、といつだったか誰かに言 われたけれど、それでこんなにも満たされた朝になるなら俺の人生も結構いい もんじゃねえの?とか。

ひやりとした風が畳をなでた。目を上げれば窓が開いている、もう朝だ。そう いう朝は必ず先に起きていて(時には風呂に入ってたりもして)窓枠に銀時が よりかかる。昨夜の空気を残さないのは、神楽のためであり、僕のためである ことを知っている。それがありがたいときと非常に忌々しくはあるがもったい ないと感じるときがあって、本日はどうやら後者の気分だった。まあ敢えて全 部無視するのも僕の役目だけれど。
「ぎんさん」
「おー」
日差しが強くて顔は逆光。髪のまわりの輪郭だけがきらきらして、そういえば 髪の色だけはきれいだったことを思い出した。
「なに見とれてんの」
窓際から離れたせいでにやんと笑った口元が見えた。やっぱさっきのきれいと かなしで。風呂入ったなら髭も剃っとけよ。そういう顔をしたら伝わったよう で汚い顔が寄ってくる。
「やめ、近寄るなおっさん」
「んーこのために剃らないでおいたのに」
少しも違うことない嫌がらせに髭面を擦り付けてくるので顔を背けると首筋に 顔がくる。思う壺なのでそろそろじゃれるのはお終い。
「メガネください」
隠しているんでしょう、と手を差し出せば観念したように懐から出してきてか けてくれた。どこにしまってんだ。これもそのまま顔に出したら頭にぽんと手 を置かれて腹減ったなあ。とひとこと。
しんだ目は僕を見て柔らかく溶ける。あーなんか、いたたまれない。そんな目 はしなかったはずだ、いつの間にそんな色になったのだったかな。すっかり忘 れてしまった。忘れついでに朝の挨拶はしたのだったか。おはようございます 、とそのぼんやりと優しい表情に言ってから起き上がるべきなのか、僕はもう 少し考えることにする。











リンネルに残る色





====================================================================
朝はいいですね(夜型だけど)
070603