「さむい」
「電源入ってねーよ」
通り過ぎるとき軽く足でそれはもう愛猫と同じくらいにまるまった梅原の背中 を蹴飛ばして(いや一緒にはならないなぜなら可愛げという最大の一点が違う からだ)、マグカップに入ったコーヒーを渡せば不機嫌そうではるものの、少 しだけ表情を和らげてこちらを見る。俺はそれには合わせないで、猫と梅原の 中間くらいに視線を定めてそんなことを考えていたら、嫌な感じの呼び方で名 前を呼ばれる。
「はいはい」
かちりと音がした。電源は入ってそれなりにすぐ炬燵は暖まる。
「いい加減スイッチどこにあるか、とか、覚えたら」
エアコンのリモコンがどこにあるのかはすぐに見つけ出せるくせに、どうにも いつも電源の入っていない炬燵に入って文句を言うのが梅原の常であった。
「あーうん」
そうしてこいつは大体が上の空で空返事。なんで友達やってんだ。
「梅、なにしにきたの」
「おれってかわいくない?」
「かわいくない。それが?」
「うーんそっか」
「なに、かわいくないって言われたの」
「いや、かわいかったら少しくらいは愛着持たれるかな、と」
「あいちゃく」
繰り返して不可解だなあと、いつもながらに思う。梅原は俺には全く理解でき ないようなことをぐるぐる考えて、そうしていつもひとり思い悩んでいる。ぐ るぐる。
「愛着を持たれたいな、と、少し。最近思う」
「誰に」
「かじ」
「え〜…」
引き気味で嫌な声を出したら眉間に皺を寄せて梅原は抗議する。もーほんと、 勘弁して(なに言わせたいの)
「なに、きもち悪いよおまえ、どうした」
「いや、俺だって気持ち悪いよ、知るか」
もーいい、と丸めた背中をこちらに向けてこたつにもぐりこむ。意味わかんね ーけど、愛着ならこのこたつくらいにはあるけどって、言ってやったらよかっ たのかな。ああ全くきもちわるい。









そのうちがわにだけ

溜まっていく






====================================================================
まだ関係がどうにかなる前です。
070316